日本の社会保障を代表する一角。生活保護。
生活保護をめぐるニュースはとにかく毎日のように聞きますね。
ぼくも本業の仕事で生活保護に多少関わっていた身として、制度をとりまく誤解や利用者側の抵抗などを感じてきました。
そこで、この記事では何かと言われがちな生活保護をテーマに取り上げ、生活保護以下の生活を強いられている人のために、「正々堂々と」少し感情を込めて書いていきたいと思います。
ブログが掲げる、『経済的独立のために』、本当に生活が厳しい人は遠慮なく申請してほしいと思う。
日本では、最低生活費を保証されている
日本国憲法第25条にはこのように書いています。
『すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する 』
あなたが、食事にも事欠くとか、電気代も払えないとか問題があるのならば、ぜひ遠慮なく申請を考えてほしいと思います。
健康で文化的な最低限度の生活を営む権利は国民であれば、誰でも有しているのです。
どんな状態であれば申請できる?
いちばん大切なのは、
単身世帯の場合、
①貯金や保険など金融資産がないこと
②年金や養育費、給料など毎月入ってくるお金が生活保護の基準額を下回ること。
主に、この2点です。ただし同時に満たす必要があります。
気づいていただいたでしょうか?
大切なのは、どちらも「あなたのお金はどうなっていますか?」という点のみ。
病気じゃないのであれば生活保護を申請するんじゃなくて働きなさい、とか家族に養ってもらいなさい、などは、あくまで保護が始まってからの話であることです。
それはその時に考えるべき話であり、その時の事情で担当者と相談するものです。気にする必要は一切ありません。
なお、2人以上世帯の場合も基本的に上のものと同様ですが、一緒に住んでいる家族に生活保護を受けたくない人がいる場合は、生活保護の申請は出来ません。これは、生活保護というのは、「申請したい」という意思表示を満たす必要があるためです。
この場合、引っ越しして一人で住んでから申請するか、母屋と離れという風に外見上別の居宅であれば面接の担当者にそれを強くアピールしてみましょう。
毎月支給される生活保護費は?
私が住んでいる市町村であれば、
家賃以外の、すなわち食費や水道光熱費など生活扶助費は、
約70,000円/月ほど。
ただしこれは世代区分によって変わります。若い人のほうが多いです。また、
冬になると、冬季加算というものが付いて2,500円/月ほど上乗せされます。
これに家賃額がこれも自治体によって変わりますが
34,000円/月(ただし上限)
家賃は上の生活扶助費と違って、実際にかかる家賃分しか出ません。
28,000円なら28,000円しか出ないということです。支給される上限額が34,000円ということ。
家賃が34,000円のアパートに住んでいるのであれば、
合計104,000円/月ほどでしょうか?
毎月のお金が家賃込みで104,000円ほどというのはどうでしょうか?確かに決して贅沢は出来ないですが、お金を掛けずに自炊を心がけ、固定費を抑えれば、次の飛躍に向けて準備は十分できると思います。
生活保護のことが家族や親戚に連絡が行ってしまう「扶養照会」について
扶養照会という言葉がニュースになっています。
扶養照会について、共産党のしんぶん赤旗ですが端的に書かれているのでリンクを貼っておきます。
扶養照会というのは、福祉事務所が申請者の家族に対して、「この方、生活保護の申請中ですが扶養できませんか?」という問い合わせをすることです。
両親、子供、祖父母、孫、兄弟、親の兄弟(おじ、おば)、兄弟の子(おい、めい)に対し、行うことになります。
ここでの問題が、生活保護の申請が家族にバレてしまうんじゃないか?
親族に対して恥ずかしい、顔向けできなくなる…。など感じ、申請するのが心理的に難しくなるという点。
ここで、厚労省は運用を少し変えたのですが、
虐待を受けた過去がある親族、借金をしている親族などには「扶養が期待できないもの等」として、扶養照会をしなくてよくなりました。
申請者側としては、「お金を借りていて、申請していることがバレるとまずい」、「親から暴言などを受けて縁を切っているから扶養照会はやめてほしい」とハッキリと主張しましょう。
もちろん、最終的にはケースワーカーの判断ですが、「借金をしている」、「虐待を受けている」という事実があればハッキリと言っておくべきです。
そのような事実がない場合は…、
その辺は事情に応じて調整しましょう。個人的には扶養照会されても堂々としておけば良いんじゃない?というタイプですが、気になる人がいることは当然だと思います。
生活保護の申請
自分の生活、受けている福祉サービス、貯金など資産がわかる通帳などの各資料を持って申請に行くことになります。
ここで、貯金がある程度残っていれば、保護が決定しても、最初の月だけ少ない金額しか支給されなくなるので、ある程度残っていれば1ヶ月ほど前から下ろしておくのが無難です。
福祉事務所の窓口で新規申請といえば、面談室に通され話を聞いてもらえるはずです。そこで、ハッキリと生活保護の申請をしたいと伝えましょう。
主に、3枚~5枚の用紙に、申請書、資産報告、収入報告、家族のことなどを記入して提出します。
個人個人で状況が異なりますから、何かと質問されることもあるでしょう。隠したりせず、堂々と答えたら良いかと思います。
持ってきた、通帳や年金証書などの資料はコピーしてもらい、申請書と一緒に提出となります。
最後に、生まれてからの学歴、職歴、結婚歴などの生活歴を聞かれる場合もあります。
これはタイミングが後か先かによって変わるだけで、担当者がこの場で聞いておこうと思ったらこの申請の段階で質問されることもありますので、ある程度思い出しておくのも良いでしょう。
過去のことで申請が却下されることは基本的にないですから、正直に正々堂々と答えればいいかと思います。
なお、審査がおりたら、この申請日にさかのぼって生活保護適用になります!
よって、申請日以降は健康保険証は財布から抜いておいて、使わないよう注意しておきましょう。代わりに病院の窓口で生活保護申請中と伝えましょう。
生活保護の審査のための家庭訪問
コロナ感染症の問題がありますが、担当者から家庭訪問を求められることもあるでしょう。
生活保護の重要な前提に、「居住実態」の確認があります。
居住している場所で生活保護を受けることになるので、家庭訪問が大切となるのです。
そこで、担当者と日程調整し、訪問の日を約束し、家の中を見てもらうことになります。
テレビやエアコンなどは持っていても構わないですが、高級腕時計などがあれば、さすがに処分して生活費にするよう言われる可能性があります。これは少し注意が必要かもですね。
生活保護の決定後
申請日から2周間ほどすれば、決定が下りるはずです。
お金がもらえるのは、その決定5日後ほど後。
担当から電話が来て、福祉事務所にお金を取りに来るように言われます。私の住んでいる市町村であれば、決定後の初回は手渡しですが、それ以後は振込になります。
この面談の際、口座振込に変更する書面にサインします。
保護の注意事項を聞いて、健康保険の返却をすれば一旦は落ち着くかと思います。
気をつけておくべきこと
①車に乗らないように
車の所有と乗車が禁止されていますが、これはかなり強い義務ですので、従っておいたほうが無難です。代わりに原付バイクを利用しましょう。
②収入は隠してはいけない!
お金に関することはとにかくきちんとしておいた方が良いです。
生活保護を受けながら、隠れて仕事をして保護費と二重取りするのはリスクとリターンのバランスが悪すぎます。
というのも、毎年課税に関する検査を行っており、年金や給料が自動的に抽出されるため、振込などで報酬をもらった場合、バレる可能性が非常に高いわけです。
バレた場合、二重取りになった分のお金は全て没収されてしまい、損でしかありません。しかも、それが記録され、ずっとその印象が残り続けます。
友人や親族から手渡しでお小遣いを貰うくらいならバレることはないでしょうが…。
ちなみに、きちんと申告すればむしろ働くように言われることもあります。
申請前は就労しなさいと言って、申請を断ることは出来ませんが、保護決定後は担当者から就労するように口を酸っぱくして言われることになるかと思います。
対人恐怖症や適用障害など病気の人はその診断書を貰っておきましょう。病気じゃない人は、落ちてもいいので面接くらいは行っておくのが無難です。
まとめ
確かに、ニュースやネットで取り上げられるように、生活保護申請において、水際作戦と呼ばれるものがないとは言えません。
しかし、現在はあまりそんな状況はなくなってきたと思われます。厚労省を始め、県なども再三保護申請の権利侵害になるようなことをしないよう福祉事務所に強く指導しています。
よく、「相談と言ってはいけない、申請に来たと強く言うべき」とネットで言われていますが、ぼくが上に書いたように、①申請の意思があり、②資産がほぼなく、③年金や給料、養育費が生活保護水準を下回っている、という状況で申請に行けば、困窮しているのは明白なのですから、申請させてもらえないということはないはずです。
もし、仮に問題がありそうであれば、①すぐに誰かと一緒に再度申請に行く②県に相談する③市議会議員に相談する④地元の支援団体に相談する
という方法が考えられます。
しかし、繰り返しますが、現在の申請は本当に簡単です。隠すのではなく、お金がなく、実際に困窮しているのですから、それが明示できるようにお金がないことをアピールすることが最も大切です。
晴れて、保護決定となった暁には、再度人生を浮上させることが出来るように、病気の治療に集中したり、勉強したりして、有意義に時間を使ってほしいです。
生活保護の良さ、凄さは、毎月必ずお金が入ってくることです。残りのリソースを人生の立て直しにじっくりと腰を据えて投入することが出来るものです。
日本の生活保護は素晴らしい制度ですので、困窮されている方は、堂々と使ってください。同時に、自尊心を失わずに、次の飛躍に向けて人生を楽しんでほしいと思います。